民商法典の「保証」「抵当権」の改正 ~ 保証人、抵当権設定者の権利・保護の強化

タイ民商法典の「保証」及び「抵当」の改正に関する法律が成立し、まもなく施行される。

I. 主な改正内容

今回の改正の主な目的は、保証人及び抵当権設定者の権利と保護を強化することである。逆に言えば、債権者である被保証人や抵当権者にとってはかなり不利な内容となっており、特に以下の取引に悪影響が出るものと見られる。

1)     主たる債務者が、融資契約等の履行や債務を保証するために、商業銀行と結ぶ保証契約または抵当権設定契約

2)     建設契約などの原契約の履行や債務を保証するための保証契約

3)     履行を保証するために商業銀行が発行する銀行保証

主な改正内容

改正による結果

予想される影響

保証人は主たる債務者になれない。

保証契約の連帯保証条項(又は類似する条項)は無効。

·      主たる債務者への請求手段が残されている限り、受益者(債権者)は保証人に請求できない。

·      主たる債務者への原契約(例:EPC契約)履行請求手段が残されている場合、保証人は弁済を遅らせることができる。

将来債務や条件付債務に対する保証責任の詳細を明確にしなければならない。

将来債務や条件付債務の保証契約には、保証責任の詳細(目的、原債務、最大保証金額、保証期間など)を含めなければならない。これに反する場合、保証契約は無効。

·      将来信用供与を含む包括根保証契約は認められない。

主たる債務者が債務を履行しない場合、保証人及び物上保証人へ通知しなければならない。

·      主たる債務者が債務を履行しない場合、不履行日から60日以内に保証人へ通知しなければならない。この通知を怠った場合、保証人は、60日経過後に発生しうる遅滞利息や損害の負担を負担しなくてよい。

·      この債務不履行通知は、改正法施行前に締結され、施行後も継続する保証や抵当にも要求される。

·      受益者(債権者)は、債務不履行が発生する度に保証人に通知しなければならない。

·      債権者は、抵当権を実行する前に、債務者への督促後15日以内に物上保証人に通知しなければならない。これを怠った場合、物上保証人は、15日経過後に発生しうる遅滞利息や損害を負担しなくてよい。

·      債務不履行通知要件が加えられたことで、債権者が遵守すべき手続きが増える。

物上保証人の責任は、抵当物に限られる。

·      抵当権実行後の純益が債務額より少ない場合に物上保証人に差額を負担させるという契約条項は無効。

·      物上保証人に以下のいずれかを約束させる契約条項は無効。

1)     抵当物の金額を超えて保証すること。

2)     同じ原債務を保証人として保証すること。

これらについて、抵当権設定契約や個別契約で合意していても無効。

·      物上保証人は同じ原債務の保証人になることはできない。

抵当権設定者は競売を請求できる。

·      債務不履行時に、抵当権設定者は訴訟を提起することなく、抵当債権者に対し、抵当物の競売請求を通知することができる。ただし、抵当物に他の抵当権設定や先取特権登記がないことが条件である。

·      競売請求通知受領後1年以内に競売が実施されない場合、物上保証人は、1年経過後に発生しうる遅滞利息や損害を負担しなくてよい。

今回の改正法に反して合意される契約条項は無効となる。

·      今回の改正法には、契約者が保証や抵当権について自由に合意できない項目が定められている。以下にその一部を列挙する。

-        連帯保証、将来債務の内容、債務者の債務履行期間の延長、原債務の軽減。

-        物上保証人の限定責任、抵当権実行手続。

·      商業銀行は、改正法に合わせて標準書式の見直しが必要であろう。

II. 改正法施行後に締結される保証契約や抵当権設定契約への影響

前述のとおり、今回の改正法施行後に締結される保証契約及び抵当権設定契約については、改正法の規定を順守しなけばならない。また、保証契約及び抵当権設定契約に基づく当事者の権利及び責任は改正法に従って変更される。

特に、保証人を主たる債務者とする保証契約や民商法典の特定条項の適用を除外する合意は無効となる。したがって、改正法施行後は、債権者による保証契約上の権利行使が大幅に制限されることになる。

 

III. 改正法施行前に締結され、施行後も残存する保証や抵当権への影響

改正法施行前に締結され、施行後も残存・継続する保証や抵当権に対しても、改正法は適用される。重要な遡及的効果には以下のようなものがある。

1)     【保証】債務不履行が発生する度に、債権者は保証人へ通知しなければならない。

2)     【抵当権】

a.     物上保証人の責任は抵当物に限られる。

b.    債権者は、抵当権を実行する前に、債務者への督促後15日以内に物上保証人に通知しなければならない。これを怠った場合、物上保証人は、15日経過後に発生しうる遅滞利息や損害を負担しなくてよい。

 

IV. 融資ビジネスへの影響

保証契約や抵当権設定契約の受益者である債権者におかれては、リスク評価を行い、対策を取られることが望ましい。方法としては以下のようなアプローチが考えられよう。

(i)         【アプローチ1】保証契約や抵当権設定契約を改正法に合わせて変更する。(受益者の立場が貸主かどうかは問わない。)

(ii)        【アプローチ2】保証契約や抵当権設定契約を改正法に合わせて変更すると同時に、受益者にとって好都合な条項を可能な範囲で盛り込む。新たに作成する契約書類については、免責規定など、改正法の解釈上グレーゾーンにあるが受益者の利益を守る条項を加えることが考えられる。ただし、法的執行可能性は未知であるというリスクを認識する必要はある。

(iii)       【アプローチ3】改正法が指摘する問題を回避する形で、新しい契約構成を考える。例えば、共同借入やスタンバイ信用状(Standby letter of credit)の導入などである。ただし、この方法はすべての取引に適しているわけではない。共同借入は、事実、事業上の真の動機、意思、及び共同借入人の事業の性質にもよる。また、実行前に、二重帳簿などの課題についても検討する必要がある。

本件に関し何か進展があれば、またご連絡させていただく。

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